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私たち人間は、各自のスケジュールをこなすために、ほかにもいろいろな手段に頼っている。
1日3回の食事、テレビ番組、各種アラーム、コーヒーなど。
だが時間を知らせるシステムは、眠りの一部分でしかない。
そのほかに脳を眠らせ、起こすシステムが必要だ。
その詳細はまだ不明だが、脳を覚醒させるにしろ、眠りにいざなうにしろ、神経伝達物質が働いていると思われる。
その引き金役を務めるのは、多忙な視床下部のさまざまな部分だろう。
視床下部のなかで、ヒポクレチンという物質を生産する領域は、脳の目覚めを手助けしていると主張する研究者もいる。
また最近の研究では、ナルコレプシー患者はヒポクレチンが欠如しているか、とても少ないことも判明した。
自己免疫反応によってヒポクレチンが破壊されるらしい。
もうひとつ、視索前野と呼ばれる場所は、逆に脳を眠らせる働きをしているようだ。
C・Sによると、1920年に睡眠病が流行したとき、この視索前野に損傷をもつ人は不眠症になったという。
これら覚醒中枢と睡眠中枢は、同じ視床下部にある別の細胞群(視交叉上核)や、脳が起きているときに活発になる数多くの物質からも手がかりをもらっている。
そんな物質のひとつにアデノシンがある。
アデノシンは脳細胞の活動にともなってできる副産物で、これが脳内に増えると、視索前野に作用して眠気を引きおこす。
私たちは知ってか知らずか、こうした物質を日々うまく扱っている。
アデノシンの働きをさえぎるのは、一杯のコーヒーに含まれるカフェインだ。
W大学の神経科学者J・Cは、最も小さい単位で眠りを解明しようと努力している。
彼が寝かせつけようとしているのは神経細胞だ。
だが一個の神経細胞を見ても、起きているのか寝ているのか区別はつかない。
眠りを促進しているときに、すばやく発火する神経細胞もある。
私が訪ねたとき、Cは培養皿に神経細胞をどんどん足しているところだった。
神経細胞はある程度の集団になると、睡眠とか覚醒と呼べる周期的なパターンがはっきり出てくるという。
私たち人間は、自分で思っている以上にイルカに近いのではないか。
Cはそんな気がしてならない。
同じ脳でも、眠りの深さが場所によって異なるのだ。
おおむね昼間にたくさん使ったところほど、深い眠りに落ちている。
もちろん脳が半分ずつ眠るイルカとちがって、人間の脳は最終的に丸ごと眠る。
片方がうたたれするあいだ、もういっぽうが起きて食器洗いをすることはありえない。
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